近年、20代~30代の女性で急増している病気「子宮頚がん」をご存じでしょうか?
子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因となるがんで、性交渉の経験がある方は誰でもHPVに感染する可能性があります。
今回は子宮頸がんの特徴やワクチン、子宮頸がん検診についてまとめています。
子宮頸がんへの理解を深め、自分の身体を守るとともに、周りの方への啓発にも役立ててください。
目次
◎子宮頸がんとは
ここでは子宮頸がんの特徴について解説します。
- 初期症状は無症状
- 予防と早期発見が大切
それぞれ詳しく見ていきましょう。
[初期症状は無症状]
子宮頸がんの最も特徴的な点は、初期症状が現れにくいことです。
子宮頸がんは子宮の入り口である子宮頚部にできるがんです。原因となるのはHPV(ヒトパピローマウイルス)で、性交渉での性器接触で感染します。
HPVに感染しても、全てが子宮頸がんになるわけではありません。がんまで進行するには数年以上かかると言われています。
HPVに感染すると、身体の免疫機能が働き、感染した細胞の約9割は自然に排出されます。しかし、残りの約1割の感染した細胞が感染状態を維持することで、「前がん病変」と呼ばれるがんになる前の段階へと変化していきます。前がん病変は治療が必要な状態ですが、この段階ではまだ症状は現れません。
前がん病変はがんに進まないものもありますが、数年以上かけてがん細胞へと変化することで子宮頸がんになります。自覚症状はこの段階から現れ、月経以外の出血(不正出血)や性交渉での出血、においのある膿のようなおりものや水っぽいおりものが見られることがあります。これらの症状がある場合は早めに受診しましょう。
[予防と早期発見が大切]
子宮頸がんは早期発見できれば治療することができる病気です。
治療は妊娠や出産に大きく影響を与えますが、早い段階で治療を始めることで子宮を温存し、妊娠する力を保つこともできます。がんが進行すると治療の範囲も広くなり、子宮や卵巣の切除が必要となり、がんの広がり方によっては命を落とすこともあります。
前がん病変の段階では自覚症状が現れないため、早期発見には定期的な検診が重要です。
また、原因となるウイルスが特定されている病気ですので、ワクチン接種による感染予防が可能です。性交渉を経験する前のワクチン接種が望ましいですが、HPVには複数の種類があるため、性交渉経験後でもまだ感染していない種類を含むワクチンを接種することで、新しい種類への感染を予防できます。
◎子宮頸がんワクチン
ここでは子宮頸がんワクチンについて紹介します。
- ワクチンの種類
- 定期接種とキャッチアップ制度
- 男性のワクチン接種
それぞれ詳しく見ていきましょう。
[ワクチンの種類]
現在、日本で公費接種できる子宮頸がんワクチンは3種類あり、サーバリックス、ガーダシル、シルガード9です。
それぞれの違いを以下にまとめています。
ワクチンの種類 |
予防できるHPVの種類(型) |
接種スケジュール |
サーバリックス |
2種類 (16、18) |
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ガーダシル |
4種類 (6、11、16、18) |
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シルガード9 |
9種類 (6、11、16、18、31、33、45、52、58) |
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※1 1回目と2回目の接種は、少なくとも5か月以上あけます。5か月未満である場合、3回目の接種が必要になります。
※2・3 2回目と3回目の接種がそれぞれ1回目の2か月後と6か月後にできない場合、2回目は1回目から1か月以上(※2)、3回目は2回目から3か月以上(※3)あけます。
※4・5 2回目と3回目の接種がそれぞれ1回目の1か月後と6か月後にできない場合、2回目は1回目から1か月以上(※4)、3回目は1回目から5か月以上、2回目から2か月半以上(※5)あけます。
接種するワクチンの種類や接種のスケジュールは医師と相談してください。
[定期接種とキャッチアップ制度]
ワクチン接種の費用は、健康保険適用外となるため通常は全額自己負担となります。子宮頸がんワクチンの費用は1回3万円程度で、3回接種すると自己負担額は10万円弱です。しかし、定期接種の対象期間内に接種すると接種費用が公費で賄われるため、無料でワクチン接種を受けられます。
子宮頸がんワクチンの定期接種の対象は、小学校6年生~高校1年生相当の女子で、自治体から接種のお知らせが個別に送付されます。
HPVワクチンは一時期、積極的な接種を推奨していない期間がありました。そのため、接種を逃した世代の方にはキャッチアップ制度があります。平成9年度生まれ~平成19年度生まれ(1997年4月2日~2008年4月1日生まれ)の女性で、過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない方が対象です。定期接種と同様に公費で受けられます。
キャッチアップ接種は2025年3月31日までです。母子手帳や予防接種手帳などで過去のワクチン接種の履歴を確認してみてください。
[男性のワクチン接種]
アメリカなどでは男性に対してもHPVワクチンの公費接種を行っています。HPV感染症は性感染症で、性交渉によって男性にも感染し、咽頭や外陰部、陰茎、肛門にできるがんの原因となります。特に咽頭がんは男性に多く、男性にとってもHPVワクチンは必要です。
任意の接種ですが、ぜひ男性もHPVワクチン接種を検討してみてください。
◎子宮頸がん検診
子宮頸がんの早期発見には検診が重要です。早期に発見し、治療を早く始めることができれば、妊娠や出産への影響も少なくなります。
- 子宮頸がん検診とは
- 検査結果でわかること
それぞれ詳しく見ていきましょう。
[子宮頸がん検診とは]
子宮頸がん検診では、子宮の入り口を検査用のヘラやブラシでこすって細胞を採取します。多少の痛みはありますが、時間はあまりかかりません。
がんだけでなく、前がん病変の細胞も発見することができるため、自覚症状のない段階での早期発見が可能です。
20歳を過ぎたら2年に1回の子宮頸がん検診が推奨されています。ワクチン接種をしていても検診は受けるようにしましょう。前回の検診の結果によっては、1年後の検診を勧められる場合もありますので、検診の間隔は医師に確認してください。
[検査結果でわかること]
子宮頸がん検診の結果は、がんの疑いがない「精密検査不要」と、がんの疑いがある「要精密検査」に分かれます。
「精密検査不要」の場合は、2年ごとに検診を受けましょう。不正出血やおりものの変化など、気になる症状がある場合は早めに受診してください。
「要精密検査」の場合は、自覚症状がなくても必ず精密検査を受けてください。より詳しい検査をすることで、感染しているHPVの種類や子宮頚部の状態を確認することができます。
【できることから今すぐに】
子宮頸がんは予防と早期発見ができる病気です。10代~40代の勉強や仕事、出産、育児などに没頭する忙しい年代だからこそ、自分の身体を大切にして過ごしていくことが重要です。
子宮頸がんのワクチン接種や検診が初めての婦人科受診になる方も多く、最初はお友達同士や姉妹、親子で受診される方もいます。子宮頸がんについて知り、ぜひ周りの方にも声をかけてみてください。
まずはワクチンの接種と2年に1回の検診です。できることから今すぐに始めましょう。