家族や友達にも相談しづらい、思春期特有の体の変化や体調に対応「思春期外来」について解説



子どもから大人へと変わっていく思春期は、身体も心も揺れ動く不安定な時期でもあります。

家族や友達に相談しにくい悩みを抱えることもあるでしょう。


今回は、思春期の心身の変化や悩みを相談できる「思春期外来」について解説します。

思春期外来は精神科にも開設されていることがありますが、今回は産婦人科の思春期外来について、思春期の症状や悩み、思春期外来でできることをまとめています。


◎思春期とは


ここでは思春期の身体と心の変化について解説します。


  • 身体の変化
  • 心の変化

それぞれ詳しく見ていきましょう。


[身体の変化]

思春期とは子どもから大人への移行期で、女性では8~18歳くらいまでの時期と言われています。


身体の変化としては、乳房の膨らみが最初の徴候となることが多く、その後に陰毛や腋毛が生え、身長の伸びるスピードも速くなります。初めての月経(初経)は、身長の成長速度がピークに達した後に起こることが多く、日本の平均初経年齢は12~13歳です。


成長スピードには個人差があり、早い人は8歳で初経を迎えることもありますが、遅い人は16歳になっても初経を迎えないこともあります。


[心の変化]

一般的に、心の変化は身体の変化よりもゆっくりと進みます。


考える力が徐々に発達し始め、思春期には自分の存在について深く考えるようになります。自分らしさを大切にしたいという思いが強まる一方で、「自分とは何なのか」という考えや進路を選択しなければならないという課題にも直面します。ホルモンバランスの変化や身体の成長とのアンバランスさにより、気持ちがイライラしやすいです。


思春期には、早く親から自立したいという気持ちと、自立への不安が入り混じり、親子のコミュニケーションは取りづらくなることも多いです。家族以外の人との人間関係を築き、友達の存在が大きくなっていきます。社会生活の中心が「家族」から「友達同士のグループ」となるため、友達との違いに敏感になったり、友達との関係性に悩んだりすることも多く見られます。友達のグループに属さない場合は「人と違っている」という感情や疎外感を強く抱くこともあります。


また、性的に成熟していくにつれて、セクシュアリティへの理解も進んでいきます。自分のセクシャルアイデンティティ(性的にどちらの性に惹かれるか)やジェンダーアイデンティティ(自分の性は何か)についても考えを深めるようになります。


◎思春期の悩み


ここでは思春期の悩みについて紹介します。


  • 月経に関する悩み
  • その他の悩み

それぞれ詳しく見ていきましょう。


[月経に関する悩み]

思春期の月経は、まだ性機能が十分に完成していないため安定しておらず、不規則なことが多いです。初経が来ても、その後の月経周期が不規則であったり、初経の後に規則的にあった月経が不規則になったりすることがあります。また、何らかの原因で月経が何ヶ月もない状態になってしまうこともあります。原因によっては治療が必要な場合もあるため、3ヶ月以上月経がない場合は受診をお勧めします。


また、「月経痛がひどい」「月経痛がつらい」という悩みもよく見られます。子宮の発育に伴い軽減していくこともある一方で、月経=月経痛という認識で、症状が重くなっても軽視されてしまうこともあります。痛みや経血量を他の人と比べることができないため、「これが普通」と感じてしまうこともありますが、子宮内膜症や子宮の奇形が原因となっていることもあります。日常生活に支障が出るような痛みやつらさがある場合は、受診してみましょう。


初経年齢については個人差がありますが、15歳になっても初経が来ない場合は一度受診されることをお勧めします。月経は体脂肪と密接に関係しており、長距離走などのスポーツを続けている場合は初経が遅くなることがあります。その他にもホルモン分泌の異常や先天的な病気により初経が発来しないことがあります。無月経は将来の妊娠に関わるだけでなく、成人してからの骨粗しょう症や高血圧症などのリスクにもなりますので、放置しないようにしましょう。


[その他の悩み]

月経以外の思春期の悩みとして、妊娠に関する悩みも挙げられます。思春期での妊娠は身体的にもリスクが高く、社会的にも課題が多いため出産を希望する場合はご本人だけでなく、周囲の人を巻き込んだ事前の準備が重要です。出産を希望しない場合も、身体的、精神的に大きな影響を受けることになりますので、妊娠についての知識や避妊方法を知ること、将来の妊娠や出産を自分で決められるような意識を持つことが大切です。


女性器の痒みやにおい、おりものについての悩みもよく見られます。性感染症の可能性がある場合は、必要に応じて検査や治療を行います。女性器は非常に皮膚が薄く、ホルモンの変化によっても影響を受けるため、皮膚刺激を避けることや洗いすぎないことなど適切なケア方法を知ることも悩みの解決に役立ちます。


また、不眠やイライラ、ニキビなども思春期に多い悩みです。ストレスの緩和や生活習慣を整えることで解決することもありますが、症状に合わせた薬の処方を受けることで改善されることもあります。不登校や過食、拒食も思春期特有の悩みです。十分なカウンセリングと適切なサポートによって改善することもありますので、一人で悩まずに専門家への相談を検討してみましょう。


◎思春期外来でできること


ここでは思春期外来でできることについてまとめています。


  • カウンセリング
  • 検査や治療

それぞれ詳しく見ていきましょう。


[カウンセリング]

月経の悩みでも、その他の悩みでも、まずは何に困っているのかをしっかり聞き取ることから始めます。悩みがはっきりしない場合や、複雑に絡み合っている場合もあるため、時間をかけて十分なカウンセリングを行います。悩みの内容によっては、婦人科だけではなく、小児科や児童精神科など他の医療機関を紹介することもあります。相談した内容は守秘義務で守られるため、家族や学校に許可なく伝わることはありません。


一人での受診が難しい場合は、家族などの付き添いも可能です。また、ご本人の受診が難しい場合は、ご家族の受診でも構いません。まずは相談することから始めましょう。


[検査や治療]

悩みに応じて、問診や血液検査などを行います。性感染症の可能性がある場合は、性感染症の検査を行います。内診は性交渉の経験がない場合は基本的には行わず、お腹の上から機械を当てる超音波検査で子宮や卵巣の状態を把握します。


治療は、カウンセリングや薬を使用した治療が中心となります。月経困難症や子宮内膜症が疑われる場合は、低用量ピルを用いることもあります。また、カウンセリングや薬物療法と併用して、生活習慣の見直しや適切なケア方法の習得を目指すこともあります。


【まずはお気軽に相談を】


思春期は悩みの尽きない時期です。一人で抱え込まずに、家族や友達など周りの人に相談してください。

そして、相談先の一つとして「思春期外来」が利用できることも理解しておきましょう。月経や妊娠に関することはもちろん、心の悩みや種類のわからない悩みもあることでしょう。専門家によるアプローチが必要な場合もありますので、まずはお気軽にご相談ください。


松下産婦人科医院
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