産後うつについて|症状・原因・リスク


出産の後、赤ちゃんと会えて嬉しく幸せな気持ちがある一方で、気分が落ち込み、悲しい気持ちが続く病気があることをご存知でしょうか。


最近は、マタニティーブルーや産後うつという言葉も広く知られるようになり、産後のケアに集中した産後ケア事業を行う施設も増えてきました。


今回は「産後うつ」について解説します。症状や原因、特に注意する時期、なりやすい人の特徴をまとめています。


◎産後うつとは


ここでは産後うつの概要についてまとめています。


  • 産後うつの症状

  • 産後うつの原因


それぞれ詳しく見ていきましょう。


[産後うつの症状]

産後うつの症状として、以下のものがよく見られます。


  • 気分が落ち込む

  • 極端に悲しくなったり、泣けてきたりする

  • 気分が変わりやすい

  • 怒りっぽい、怒りを感じる


その他に、以下の症状も挙げられます。


疲れやすい、集中できない、過眠や不眠、頭痛や全身の痛み、性行為や他の活動への興味を失う、人に合うことを避ける、不安発作やパニック発作、食欲の減退または過食、日常生活を送ることが困難になる、子どもに対する関心を失う、子どもの世話ができない・または母親として不適切であるという感覚、子どもを傷つけることに対するおそれ、自殺念慮


症状には個人差があり、自分自身や子どもに危害が及ぶおそれのある深刻なケースもあります。


産後数日以内に見られる気分の落ち込みはマタニティーブルーと呼ばれ、産後うつとは区別されています。


マタニティーブルーは悲しさや惨めさなどの感情を抱くものですが、通常は2週間程度で自然におさまり、日常生活に支障はありません。


一方、産後うつは症状が2週間以上続き、日常生活に支障が出ます。自然におさまることはなく、治療が必要です。


[産後うつの原因]

産後うつの原因は、明確なものはまだ解明されていません。個人的な事情で、明確に原因がわかる場合もありますが、多くの場合はいくつかの要因が重なることで発症すると言われています。


産後はホルモンバランスが著しく変化し、赤ちゃんとの生活がスタートすることで環境も大きく変化します。


環境の変化に少しずつ慣れていきながら、出産による身体的な疲労の回復をし、慣れない育児を休みなく続けていくことで心身ともに疲労が溜まってしまいます。産後は、女性ホルモンの変化により、ストレスに耐える力が低下するとも言われており、今までは何でもないようなことにもストレスを感じやすくなります。


育児に対する不安や、夫婦間での育児に対する価値観の違いなども大きなストレスになります。


また、周囲と関わりが少なく、一人で育児をしている場合も、産後うつのリスクは上がると言われています。


「ワンオペ育児」は相談する相手がおらず、育児中に抱く不安や疑問を解消できないため、孤独感や社会に取り残されたような感じを抱きやすくなります。


妊娠前や妊娠中にうつ病になったことがある場合も、産後うつのリスクを上げる要因として考えられます。母親自身だけでなく、父親やその家族がうつ病の場合も関係性によっては影響を受けることがあります。


産後うつの症状はうつ病の症状とも似ているため、同じような症状を感じた場合は早めに受診をしてください。


◎産後うつはいつから?産後うつのリスク


ここでは産後うつを特に注意する時期となりやすい人の特徴についてまとめています。


  • 産後3ヶ月以内は特に注意

  • 産後うつ発症のリスク


それぞれ詳しく見ていきましょう。


[産後3ヶ月以内は特に注意]

産後うつは、産後2~3週間後から発症すると言われており、多くは産後3ヶ月以内に発症します。


産後2週間は退院後自宅での生活が始まる頃であり、自身の身体的な疲労と慣れない育児に不安を抱えやすい時期でもあります。


里帰り出産など親(赤ちゃんの祖父母)のサポートを受けられる場合、サポートが得られる間は比較的発症はしにくいと考えられますが、里帰り先から自宅に戻った頃や、親からのサポートが一旦終了したタイミングで、母子だけで過ごす時間が長くなり、不安や孤独感を感じやすくなると言われています。


また、赤ちゃんは日々成長し、お世話や育児に伴う家事も日々変化していきます。一般的に産後うつの発症は産後3ヶ月以内が多いとされていますが、産後はどの時期にもリスクはああると言えます。


赤ちゃんの発達を他の赤ちゃんを比べて不安になったり、離乳食に悩んだり、社会人としてのキャリアを心配したりと、育児中の不安は尽きません。笑顔が少なくなった、何に対しても意欲を感じられないなど、いつもと違うと感じた際は早めの受診がおすすめです。


[産後うつ発症のリスク]

産後うつ発症のリスクは、以下の通りです。


  • 流産や早産、赤ちゃんの新生児集中治療室への入院や先天性の病気がある

  • 授乳が簡単にはいかない

  • ワンオペ育児

  • 育児に対する不安が大きい

  • 真面目、完璧主義な傾向がある

  • PMS(月経前症候群)である

  • マタニティーブルーの症状がある

  • 以前にうつ病や精神的な病気になったことがある

  • 産後うつになったことがある

  • パートナーやその他の家族に、うつ病やうつ病の既往がある

  • パートナーや家族のサポートが不足している


産後うつは出産後の女性の約10~15%に発症すると言われています。誰にでも起こる可能性のあるものですが、上記のようなリスクのある場合は、発症するリスクが高いと言われています。不安な点がある場合は、妊娠期から医療機関で相談しておきましょう。


※産後うつ病 – 22. 女性の健康上の問題 – MSDマニュアル家庭版


【周囲に頼ることが大切】


産後うつは出産後の女性に誰にでも起こりうる心の病です。マタニティーブルーとは異なり、自然におさまることはありません。


育児は一人で頑張るものではありませんし、お母さんとお父さんだけで行うものでもありません。他の家族や周囲に頼ったり、利用できるサービスを使ったりして良いのです。できるだけ家事や育児に完璧を求めず、ゆとりをもって過ごすように心がけましょう。


産後うつのような症状があり、2週間以上続く場合は早めに受診し、医師へ相談してください。


松下産婦人科医院
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