生理日はコントロールできる? 「月経移動」の仕組みや精度について解説


旅行や結婚式、スポーツの試合や大事な試験の日など、「この日の生理は避けたいな」という経験はありませんか。

今回は、ピルを使って月経を調整する「月経移動」について解説します。


今すぐは使わなくても、知っていることで不安を解消できることもあります。この機会にぜひ、月経への理解も深めていきましょう。


◎月経移動の仕組み


ここでは月経移動の仕組みについて解説します。

  • ピルで女性ホルモンを調整
  • 精度は100%ではない

それぞれ詳しく見ていきましょう。


[ピルで女性ホルモンを調整]

月経移動には中用量ピルや低用量ピルを使用します。

月経は女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの働きによって、周期的にコントロールされており、女性ホルモンの分泌量が下がると月経が始まります。月経移動では、ピルを服用して女性ホルモンを補い、女性ホルモンの量が下がらないようにすることで月経の開始日を遅らせることができます。

ピルの服用をやめると女性ホルモンの量が下がるため、月経が始まります。ピルを使用するタイミングによって、月経の開始予定日を早めることも遅らせることも可能です。


月経移動に使用する中用量ピルや低用量ピルは医療機関で処方を受けることができます。月経移動は保険適用外のため、全額自己負担となります。ピルの種類や服用する期間によって異なりますが、費用は3000円~5000円程度となることが多いです。


[精度は100%ではない]

月経移動の精度は100%ではありません。ピルの飲み忘れやタイミングのずれによって、理想の日に移動できないこともあります。精度を上げるためには、正しい時期に確実に服用することと、月経周期を正確に把握しておくことが重要です。


正しい時期に確実に服用する上では、飲み忘れをなくすことが最も大切です。医師から指示されたタイミングで確実に服用できるように、ピルの置き場所を固定したり、飲む時間にタイマーをセットしたりと服用を忘れないような工夫をするのがよいでしょう。


また、月経移動は月経周期が安定していることが前提条件となります。「月経開始予定日から何日移動させるか」を考えることになりますので、月経開始日が予測できないと移動のスケジュールも立てられないのです。ご自身の月経周期をしっかりと把握しておき、避けたい日の2か月前には医師へ相談できるようにしておきましょう。


睡眠不足や過度なストレス、急激なダイエットなどは月経周期が乱れる原因となります。規則正しい生活を心掛けて、月経周期を整えることも月経移動の精度を高めるコツの一つです。


◎月経移動の方法は2パターン


ここでは月経調整の方法について紹介します。


  • 月経を早める
  • 月経を遅らせる

それぞれ詳しく見ていきましょう。


[月経を早める]

予定の月経開始日よりも月経を早める場合は、早めたい月経の1回前の月経中からピルを服用します。


低用量ピルを使用する場合は、月経開始から5日目までに服用を開始し、10~14日以上ピルを服用します。服用を中止してから2~5日後に月経が始まります。


中用量ピルを使用する場合も、月経開始から5日目までに服用を開始します。10日間服用を続け、服用を中止してから2~5日後に月経が始まります。

月経を早める場合は、ピルの服用開始が前の月経中からとなるため、早めに受診することが必要になります。避けたい日にはすでに月経が終わっていることになり、当日にはピルの服用も不要なので、より安心できる方法とも言えます。


[月経を遅らせる]

月経を遅らせる場合は、中用量ピルを使用することが多いです。


遅らせたい月経の月経開始日より5~7日前から服用を開始します。月経を避けたい日も服用を続け、服用を中止すると2~5日後に月経が始まります。


低用量ピルでも月経を遅らせることはできますが、中用量ピルと比較すると服用の途中で出血してしまう可能性が高いと言われていますので注意が必要です。

月経を避けたい日が急に決まった場合や、早める方法に間に合わない場合は、遅らせる方法が選ばれます。


どちらの方法で月経移動を行うかは、月経周期や年齢、ピルの服用経験などによっても異なりますので、医師とよく相談してください。


◎月経調整で注意すること


ここでは月経調整で注意することについてまとめています。


  • 副作用について
  • 次の月経は普段通り
  • 避妊効果はない

それぞれ詳しく見ていきましょう。


[副作用について]

月経移動に使用するピルは女性ホルモンを含んだ薬です。どの薬にも副作用があるように、ピルにも副作用はあります。身体がピルの服用に慣れるまでの一時的なものであることが多く、吐き気や頭痛、倦怠感や眠気などが挙げられます。中用量ピルよりも低用量ピルの方が副作用は起こりにくいと言われています。


[次の月経は普段通り]

月経移動では、ピルの服用を中止した数日後に月経が始まります。低用量ピルを使用した場合は月経時の出血量が普段よりも少なくなることが多いですが、普段の月経と同じように数えてよいです。その次の月経は普段の月経周期に合わせて始まりますので、月経周期を把握しておきましょう。


[避妊効果はない]

月経移動で一時的にピルを服用しても避妊効果は見込めません。ピルを服用するタイミングによってはすでに排卵が起きていることもあるためです。ピルを服用していないときと同様にコンドームなどを使用して避妊をしてください。また、緊急避妊薬も一時的な薬ですが、月経移動とは薬や服用方法が異なるため、目的に合った処方を受けるようにしてください。


【早めの相談を】


月経移動はピルを活用して、月経周期をコントロールする方法です。ピルは比較的安全な薬ではありますが、間違った使い方や身体に合わない使い方をしてしまうと、身体にも心にも大きな負担となることがあります。

ご自身に合った正しい方法で月経をコントロールできるように、早めの相談を心掛けてください。


松下産婦人科医院
医師
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