女性だけのものじゃない「ブライダルチェック」男性の検査や、意外と知られていない「助成金」について解説



ブライダルチェックは、将来的に妊娠や出産を希望するご夫婦や結婚前の男性や女性が、性感染症をはじめ、生殖機能などの検査を行うものです。


この記事では、ブライダルチェックを夫婦で受けるメリットや男性の検査でわかること、助成金について解説します。


婦人科で行われる検査なので、女性が受けるものと思われがちですが、最近はご夫婦やカップルで受けられる施設も増えてきました。性感染症を防ぐことや、妊娠の成立には男性の協力が不可欠です。検査の目的や内容を知り、ぜひ将来のためにブライダルチェックを受けましょう。


◎ブライダルチェックを夫婦で受けるメリット


ここではブライダルチェックを夫婦で受けるメリットについて解説します。


  • 感染症の予防ができる
  • 不妊治療をスムーズに開始できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。


[感染症の予防ができる]

ブライダルチェックを夫婦で受けることで、感染症の予防につながります。


ブライダルチェックの目的は妊娠や出産の妨げとなる病気の有無のチェックです。


感染者の多いクラミジアや淋病などの性感染症は、母体が感染していると不妊や流産の原因になったり、赤ちゃんが生まれる時に感染してしまったりするので、早期に治療を行うことが大切です。自覚症状がない場合もあるため、気づかないうちにご自身やパートナーが感染している可能性があります。性感染症は性交渉で感染するので、夫婦のどちらかではなく、お互いが同じ時期に治療をすることで感染を防ぐことができます。


検査項目は施設によって異なりますが、B型肝炎やC型肝炎、梅毒やHIV(エイズ)などの感染症も検査できることがありますので、どのような検査を受けるか考えてみましょう。


[不妊治療をスムーズに開始できる]

ブライダルチェックを夫婦で受けておくことが、不妊治療のスムーズな開始につながります。


ブライダルチェックでは、女性は子宮や卵巣の機能、男性は精巣や精子の状態をチェックできます。健康診断ではわからない生殖機能について検査できるので、妊娠の妨げとなる要因の有無を早期に把握することが可能です。


不妊の原因は男性側と女性側で半々と言われており、不妊治療は年齢が上がるにつれて成功率が低くなることがわかっています。成功率を高めるためには、できるだけ早く治療を開始することが大切です。ブライダルチェックでお互いの身体の状態を知り、妊活を始める時期や不妊治療の開始を考えられるとよいでしょう。


◎ブライダルチェックで男性が受ける検査


ここではブライダルチェックで男性が受ける検査を紹介します。


検査方法

検査項目

血液検査

風疹、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV、男性ホルモンなど

尿検査

クラミジア、淋病、トリコモナスなど

精液検査

精子量、精子濃度、精子の運動率、精子の形態など

超音波(エコー)検査

精巣内の腫瘍の有無など


それぞれ詳しく見ていきましょう。


[血液検査]

クリニックで腕から採血をして血液検査を行います。

血液検査では、風疹や梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIVなどの感染症の有無や抗体価を調べることができます。

ホルモン検査を行う場合は、精子の形成などに関わる男性ホルモンの量を調べることもできます。


[尿検査]

クリニックで採尿し、尿検査を行います。

クラミジアや淋病、トリコモナスなどの性感染症の有無を調べることができます。


[精液検査]

自宅やクリニックでマスターベーションにより精液を採取し、精液検査を行います。

精液を顕微鏡で確認し、精子の量や濃度、運動率、精子の形態などを調べます。


[超音波(エコー)検査]

精液検査で異常があれば超音波(エコー)検査で詳しく調べることもあります。

精巣をエコーで調べ、精巣内の腫瘍の有無や、精子の通り道や血管の異常の有無を調べます。


◎費用と助成金について


ブライダルチェックの費用は基本的には全額自己負担となります。病気に対する治療ではなく、健康診断と同じような扱いになるためです。

しかし、感染症予防の観点や人口減少・少子化対策の一環として費用の助成を行っている検査や、自治体によって助成金が受け取れる検査があります。


その一部を紹介します。


  • 風疹の抗体検査

妊娠を希望する女性とその同居家族を対象として、風疹の抗体検査の費用助成が多くの自治体で行われています。

静岡県では抗体検査は無料で実施されています。


参考:静岡県 風しん抗体検査事業


  • 不妊検査

不妊治療費助成制度(※1)とは別に、早期の不妊検査に対して費用の助成制度を設けている自治体があります。東京都や埼玉県、大阪府などまだ多くはありませんが、今後増えていくことが予想されます。


ブライダルチェックの検査でも適用できる場合があり、夫婦がともに検査を受けていることや年齢など条件がいくつかありますので、利用する際は要件をよく確認してください。


静岡県や菊川市ではブラダルチェックの費用助成としての制度がありませんが、菊川市では不妊症治療費用助成制度があります。


参考:菊川市 不妊症治療費用助成制度


ブライダルチェックの延長として不妊症の治療を始めることもありますので、申請を忘れないように注意しましょう。


(※1)不妊治療費助成制度は体外受精や顕微授精を行う際に

保険適用された治療と併用して実施される

先進医療の費用の一部を助成する制度です。


参考:静岡県 不妊治療費助成


ここで紹介したものは一例です。ご自身の住民票のある自治体のHPなどから、助成制度を調べてみてください。


【お互いを大切に】


ここではブライダルチェックを夫婦で受けるメリットや男性が受ける検査、費用と助成金について紹介しました。


ブライダルチェックを夫婦で受けることで、お互いに自分の身体を知ることができ、安心して将来を思い描くことができるでしょう。


フランスなどでは、お付き合いをスタートする際に二人で産婦人科を受診し検査を受ける習慣があるようです。

感染症や生殖機能についてはデリケートなことですが、お付き合いをする上でも、夫婦になり共に家庭を築いていく上でもとても大切なことです。


お付き合いをスタートする際など、大切な相手ができたらお互いのために二人でブライダルチェックを受けてみてはいかがでしょうか。


松下産婦人科医院
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